流れる詩、流れる川、流れる血

あるとき知人の女性と、誰もわからない遠くの言語で書かれた詩の朗読会を開いたとのことだった。意味はわからない、でも意味を超えてその声は、囁きは、外の車の音、流れる川の音と混じり合う。小さな書店の少人数の観客はみな流れの中で夢を見た。「彼女の母語も、ユネスコの消滅危機言語だから」と彼女が言った、その「も」が気になった。「マイアの母語も消滅危機言語なの?」彼女の高い鼻や大きなや青い目の色は、僕の分からない遠いところの土地を思わせた。 

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ザルツブルグ、深さと広さ

建築家、詩人、書店員、活動家、大学教授、振付師...。世界中の都市から集う、文化・創作活動の担い手80名の国際会議、ザルツブルグ・グローバル・セミナー(SGS)に参加しました。場所は池に臨む古城。「塩の砦」を意味する町、ザルツブルグ。オーストリア中北部、モーツアルト生誕の地だそうです。街の中心から車で10分ほど郊外へ向かうと、1736年築の古城と池。それらを囲む7ヘクタールの敷地は、現在ホテルとなっています。映画サウンド・オブ・ミュージックが撮影された場所とのこと(あの映画は実話をもとにしていて、ここはモデルとなった家族が実際に住んでいた家でもあるそうです)。

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「数字は劣化した現実」林裕

「境界線での重心移動」から発展して、マジョリティ・マイノリティの話題になった際、コピーライターの林裕さんが「数字は劣化した現実だ」と言いました。刺激を頂いたので、林さんのお話の大意を書きます。

数字には現れない現象がたくさんある。平均値は全員を見わたした数字と考えがちだが、例えば平均年収を例にとると、よく言うようにたった一人の外れ値が結果に大きく影響することもある。
大きな会社で大人数でものづくりをするとき、「正しいけれどつまらない」ものができてしまいがちだ。これは、人数が増えると、ロジックしか通らないことによる。ロジックから外れた提案をすると、責任問題が発生してしまい、感性的な魅力が失われてしまう。
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価値の融通、いたずら。二つの領域に両足をまたぎ、重心を移す

昨日に続きサカナクション 山口一郎さんから聞いたお話について。blue art by Bombay Sapphire の企画で、イベントに先駆けてインタビューをしていました。最も印象に残ったのは、「マイノリティとマジョリティに両足をかけて、その境界線をまたぐ存在でいたい。」という言葉です。大体の趣旨を書くと、"ある人はポップなメロディラインに惹かれてバンドを知りライブに出かけるかもしれないが、いざ会場に行くと20数個の大型スピーカーがスタジアムを囲んでいて、音作りはシリアスなトランスミュージックのそれになっている。マジョリティの入り口から誘われた人が、ある種マイノリティ的なこだわりを目の当たりにする。「詐欺」みたいなものです” という発言でした(記憶によると、だいたいは)。それがきっかけになり、逆の世界に魅力を見いだしてもらえれば、とも。

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競作、香水、カクテルピアノ。blue art - サカナクション山口一郎さん

二人の、大事な「青」を教えてください。Brutus編集長の西田さんと、サカナクションの山口さんに聞きました。「青」にまつわる物語を集めるプロジェクト blue art. 二人が大事にしている青いもの、青い記憶、青い時間。僕は企画と司会を担当しました。走り書きのメモを残しておきます。

まず山口一郎さんのお話。詳しくはウェブサイトのインタビューにあります。全体を通して彼のセレクションは、創作の、思考の、次の作品のきっかけになるもの。過去の、未来の、創造性を支えるもの。

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接線の彫刻 "tangent sculpture"

以下のテクストは、ある「もの」について記述しています。これがなにか、わかりますか?

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それは底面はもつけれど頂面をもたない一個の円筒状をしていることが多い。それは直立している凹みである。重力の中心へと閉じている限定された空間である。それはある一定量の液体を拡散させることなく地球の引力圏内に保持し得る。その内部に空気のみが充満しているとは、我々はそれを空と呼ぶのだが、その場合でもその輪郭は光によって明瞭に示され、その質量の実存は計器によるまでもなく、冷静な一瞥によって確認し得る。 

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銀河鉄道の夜 ― 文字の影に隠したメッセージ

宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」。星祭の夜にジョバンニとカムパネルラが鉄道に乗り、いろいろの場所で空の星々を眺めます。作中には、たくさんの地名、星座の名前が登場します。星々の南中時刻を組み合わせて分析すると、描かれているのはちょうど「8月13日」の夜でいあるとわかるそうです! しかも8月13日の夜といえば、ペルセウス座大流星群。星降る夜、まさに星祭です。

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本当に大事な美術館は

1)本当に大事な美術館は鑑賞者の眼のなかにある。自分だけの、形のない美術館。素敵なものに出会ったら、それを収蔵したい。どんなに社会が価値を認める作品でも、お金はかからない。無限のスペースもある。でも本当に本当に大事なものに出会うには、常に眼を開いていなければいけない。これが難しい。放っておくと生活のなかで瞼が閉じてしまう。

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